1.β-ブロッカー
動悸・震えを強力に抑制する心臓関係の薬です。血圧を下げる作用もあります。緊張場面の前に服用します。発表(プレゼン)や挨拶等、人前で話す時などに動悸がして声や手足が震えるような人には、著明な効果が得られます。人前で字を書く時や、お茶を出す時、演奏会で楽器を演奏する時などに手が震えるような人にも奏功します。
βブッロッカーで最も使用されているのがインデラルです。インデラルは妊娠中や授乳中も服用可能なので、若い女性の第一選択薬となります。ただし、服用には当クリニックで十分説明を受けていただ必要があります。当クリニックで処方されるインデラルは、高品質の先発品なので安心して服用できます。海外の輸入物のジェネリックよりも少量の服用で十分な効果が期待できます。現在は個人でのインデラルの輸入は違法となります。緊張していなくても体質的に手などが震える本態性振戦という病気の治療には、αβブロッカーのアロチノロールが使用されています。
同じβブロッカーの仲間でも、メインテート(ビソプロロール)やテノーミン(アテノロール)は、あがり症に対する治療効果は弱いので、私は処方しません。最近はメインテートや他の病医院で処方されたβブロッカーが効かないという理由で、当クリニックを受診される方が増えています。
あがり症で震えが主症状の人は、軽度の本態性振戦とも考えられます。震えが主症状の患者さんは神経内科的なアプローチであるβブロッカーで治療すべきであって、SSRIのような精神科的な治療法で治そうとするのは誤りです。ただし残念ながら、精神科の医師の中にはβ-ブロッカーの処方に不慣れで、処方したがらない人も多くみられます。また、喘息があったり心臓病があると使用しづらい場合があります。
2.抗不安薬
いわゆる安定剤のことです。不安・緊張を和らげ、気分をリラックスさせます。緊張場面の前にアルコールを一杯ひっかけていく人がいますが、抗不安薬はアルコールと似た効果があります。アルコールより安全ですが、乱用すると依存症になります。1回の服薬でもケアレスミスなどが増えますので、使わないですめば、それがベストでしょう。
3.SSRIと呼ばれるタイプの抗うつ剤
元々はうつ病やパニック障害の治療薬でした。二十年位前から社交不安障害(=重症のあがり症)の患者さんの治療に使用されるようになりました。どちらかというと、引きこもり気味の症状の重い患者さんで効果を発揮します。
SSRIの効果を得るためには、十分な量を毎日服用しなければいけません。有効量に個人差があるので、定期的に通院し投与量を調節する必要があります。飲んですぐ効く薬ではありません。効果発現までに10日〜2ヶ月程度見込んでおく必要があります。この薬が効いてくると、一日中気持ちが明るく積極的になり、あまりクヨクヨしなくなるという特徴があります。
SSRIが効きすぎると、楽観的になりすぎて言いたい放題になったり、浪費したり、物事を適当に済ませたりする可能性があり、十分な注意が必要です。このような問題から現在、本郷三丁目・植村クリニックではSSRIの処方は行っておりません。SSRIは他の薬に比べて値段が高いのも欠点の一つですが、製薬会社にとっては莫大な利益をもたらします。
4.その他の薬剤
緊張場面で吐き気がしたり、下痢、腹痛などがする場合は、消化器用の薬も使用します。顔面等からの発汗で悩んでいる方には、汗止め用の薬も使用します。当クリニックでは処方しません。
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